2021年10月「志望校 下げる 基準」
高3の10月、共通テストまで100日。
ユズは勉強する時にスマホを部屋に持ち込まなくなり、音楽を聴きながら勉強することをやめたようです。
数Ⅲは成果が出ないことを実感する日々。
得意な文系だったらこんなに苦しくなかったかも?なんてグラついては、生物をやりたいことが大事、と立ち返ります。
そんな中、東葛の2年生から生物学オリンピックの日本代表候補が出たというニュースを耳にしました。
ユズは科学の甲子園に出るよりも前に、生物学オリンピックに興味を持ち、説明会に参加したことがあります。
そこで「キャンベル生物学」という鈍器本の存在を知り、お年玉を握りしめて本屋に買いに行きました。
結局、合唱祭やら行事やらで、関心が薄れてしまったのですが。
だからこそ、受賞のニュースに驚き喜んでいました。
学校の表彰式では、陸上部やフェンシング部などのインターハイ、将棋部などとともに表彰されていたそうです。
こういう子たちがノビノビと育つ学校であってほしいと思いました。
夏休み前のユズの頭の中は、引き出しの手前にモノを積み上げてしまい、引き出しを開けることすらできない「片付けられない部屋」のような状態でした。
今は少し整理できてきたけれど、必要なものを引き出すのに苦労しています。
模試を受けても、数学は頭が真っ白になるのでは、という怖さがあるといいます。
10月半ば
時間がもったいないのと、身なりを整えるのが面倒で、自習室に行かなくなりました。
コロナで自習室に制限があるのも不便だったようです。
10月末
修学旅行代わりのディズニーランドに出かけます。
写真を見せてもらうと「大学への数学」(マニアックな数学誌)を読みながら、真顔でアトラクションに並ぶグループの図があり、皆が面白がって写真を撮っていたようでした。
コロナ禍でようやく見られた、東葛生の笑顔。
ディズニー翌日の学校はさすがに疲れたらしく、急に気温が冷え込んだこともあり、ユズは再び落ち込みモード。
私はコンビニのスイーツを買って帰り、ユズの話を聞きました。
受験生が夏休みに終わらせている化学の問題集を、ユズは今やっている。
予定より70問遅れている。
駿茶の数学をオンラインで見終えたが、いつものように
「まあ皆さんは、これくらい中学受験でやったでしょうけれど」
「今の時点で、旧帝の問題くらい解けているでしょうけれど」
と先生に煽られ、普段なら平気だけど凹んでしまった。
「志望校 下げる 基準」と検索し、
出てきた武田塾の動画に「下げるな」と言われた。
私立中高一貫に通う子たちの完成度を思うと、辛くなってしまう。
しばらく話を聞きましたが、とにかく自虐しか出てきません。
そこで、
作戦① スイーツを喰わせる
スイーツで空気を変え、話をしました。
トップ集団を見て
「自分はそこに入れない」
と落ち込んではいないか?
東大合格者3千人中、2千人が私立中高一貫と公立トップ校。
その中にユズはいない、と話します。
作戦② 夏の冠模試の結果を見せる
ユズは順位をよく見ていないので、東大実戦模試で理Ⅱの志願者中 427番目 だと伝えます。
理Ⅱの募集人数は 532人
この時点では片足入っている。
↑ グラフではB判定の段に見えますが、判定はC。
一段下がると圏外、という立ち位置。
ユズがやるべき事は、427番目付近から力を落とさない事、1点でも取る事。
そう考えれば、今やってる勉強に無駄なんかない。
東葛中受検の時と同じ。
補欠から1点でも取って繰り上がるか?
敵は強いと泣いていても仕方ない、ということを私が例え話で伝えたら
「ピンとこない」
と言われます。
作戦③ ハリーポッター
じゃ、ハリーポッターで考えたら?
呪文も手に入れずに敵が怖いなんて、ハーマイオニーは言っていたか?
と私が言ったとたん、ユズの表情が変わります。
「わかる」
ユズはマグルなんだよ。
何もしなくても箒で飛べるポッターじゃない。
望まなくても箒が送られてくる純血のポッターとは違う、と私が言うと、
「そう、この年齢でも兆候が出ない。
フクロウも飛んでこない。
マグルだと分かっていた。
ハーマイオニーは
時間を巻き戻してまで勉強した。
ハーマイオニーほどの努力もせず、
呪文が使えないことを
… 愚痴っていた…のか?」
とユズが早口で喋りだします。
駿茶の先生が煽るようなことも、ホグワーツではあるでしょ?
と私が適当に言ったら、
「ある…スネイプが〇※▲◇…」
とブツブツ言い、自分の状況をホグワーツに置き換え、完全に客観視できたようでした。
ユズに
「駿茶の授業を残り12月まで受けて、こんな風にメンタルをやられるなら、受けない方がいいと思う。
煽りが気になる?」
と尋ねたら、もう大丈夫、とのこと。
この時は、駿台の先生を嫌いなのかと思っていたのですが、最近その事に触れたら
「すごい好き」
なのだそうだ。受験生の心理わからん。
何と闘っているのか、外から見たら分からないだろうけれど。
間違いなく大事な闘いをしていた10月なのでした。