2021年12月「一期生だから」
高3の12月
この頃は、東大との距離が分からないだけでなく、わが家では「東大」という言葉さえ口に出せないでいました。
仕方なく、
「名前を呼んではいけないあの大学」
「例のあの大学」
と言っていたのですが、冠模試の結果を見てようやく大学名を口にし、むしろここからは、声に出していった方がいいんじゃないか?と家族で話しました。
それでもユズが強気になれた訳ではなく。
学校を休んで河合塾の自習室で終日過ごし、晩に食卓で化学の「重要問題集」2周目を解きながら、泣いていたこともあります。
もっと早く取り掛かっていれば3周できたのに、と後悔しているようでした。
共通テストまで残り1ヶ月なのに、共テの勉強もしていません。
何でもすぐ忘れてケロッとしてしまうユズだけれど、この後悔は忘れないでいてほしい、と思いました。
学校をさぼったこの時期、化学がようやく整理できてきました。
重要問題集も、解けない問題だけなんとか3周。
12月半ば
学校で駿台共通プレ模試が行われましたが、ユズは受けませんでした。
共テ対策をしていないので、意味がないとのこと。
これは生徒によって捉え方が違うでしょう。
姉ミカンは塾に行かなかったので、できるだけ場慣れするため、この模試を学校ではなく大学会場まで受けに行きました。
私は後期出願用に、北海道大学の資料を取り寄せました。
植物や虫ではなく、病原体やウイルスを学びたいというユズの希望に、北大は合っているように思いました。
もし最初にこの事を知っていたら、数学で悩まず北大を第一志望にしていたかもしれません。
ただ、ユズの中に "例のあの大学" に挑み東葛中に貢献したい、という気持ちがあることも分かっていました。
受験を終えた時、ユズは
「一期生だから頑張れた」
と述べています。
そのまなざしは、まさに
「長男だから我慢できた」炭次郎。
一期生だからこそ、守るべき何かを背負い、東葛中の柱となるべく "鬼ムズ" と呼ばれるZ会共テ対策本に挑んだのでした。
学校が冬休みに入る最終日、ユズは珍しく朝から登校。
友人と外食する、と連絡がきます。
久しぶりに友と会い、ユズは誕生日のプレゼントを戴いたようでした。
その中に、メッセージ帳がありました。
東葛中高で出会った友人たちから、手書きのメッセージが寄せられています。
ユズ本人が学校を休んでいるので、メッセージ帳を隠す必要がなく、気晴らしも兼ねて回してくださったのでしょうか。
ユズを支えてくださった数Ⅲの先生からの、達筆のメッセージもありました。
ユズ自身は、メッセージ帳をいただけるようなキャラクターではありません。
スポーツ祭のクラスTシャツへの落書きも、「リボソーム」など生物用語が書き込まれ、キラキラ感とは縁遠いものでした。
取りまとめてくださった、友の人徳。
それは、一年前ユズが「東大を受けます」と宣言した時、その場にいたメンバーでもありました。
気を抜くと早口になってしまうところ。
遊びに行こうと計画すると「拷問博物館」のような変な行先になってしまうところ。
人と違うところ。
メッセージ帳にはそういったユズの様子と
「そのままでいて」
という言葉が書き込まれていました。
メッセージを開いたサイゼリヤで、ユズは泣いたそうですが、家で見せてもらった私と、なぜか姉ミカンまでがダダ泣き。
「ともだちを大切にしよう」
とつぶやくミカン。
学校の皆さんから、力をいただいたユズなのでした。
家に届いた河合塾東大オープン模試の冊子には、ユズ含め東葛現役生5人の名前が載っていました。
東葛生のトップは、夏のオープンでも冊子に名前があった高入生、ぶっちぎりです。
みんな、がんばれ。