white board

white board

東葛中受検にまつわるエトセトラ

教科書は読めている?

先日、数学者の新井紀子さん主催「リーディングスキルフォーラム AI時代に求められる読解力」を聞きに行きました。

新井紀子さんは、「東ロボくん」というAIロボットにセンター試験を受けさせて、ロボットが東大合格点を取れるか研究されてきた方です。

東ロボくんは、高3生の上位2割に入るまで成績を伸ばしました。しかし、今の技術の延長線上では東大に届かない、という結論に至りました。

”東ロボくんも論述式の問題を解きますが、一見なんとなく整った回答が出てくるものの、単に記憶していることを並べているだけで質問に答えていないという文章の内容でした。つまり東ロボくんは言葉の意味を理解していません”

"AIが言葉の意味を理解する段階に達するには、根本である数学がイノベーションを起こす日を待たなければなりません"
~国大協広報誌「国立大学Vol.46」より~


新井先生は、問題文が全く読めていない東ロボくんが、なぜ多くの学生より偏差値が高くなったのかという点に注目しました。

そこで「リーディングスキルテスト」という読解テストを作り、学校や自治体の協力のもと、2万5千人以上のデータを分析します。

この調査から、予想以上に多くの子どもたちが、教科書レベルの文章が読めていないこと、AIと似たキーワードとパターンの拾い読みをしていることが分かりました。

リーディング能力と、その人の環境・好き嫌い・読書習慣など、様々なデータとの関連性を調べていくと、最も関連があったのが高校の偏差値だったそうです。

高校の入試問題が解けるということは、教科書が読めることと強くリンクしているのです。

一部ニュースでは、最近の子の読解力が低下したと書かれているのですが、これは間違い。日本語のルールに従って読めないことが、初めて証明されたのです。
「低下」と書いた記事が、ネットニュースにコピペされ、ヤフーなんて「学力低下」に変換してますから、控え目に言ってリーディングスキルは大人も大事です。

中学を卒業するまでに、中学校の教科書をきちんと読めるようにすることが、教育の最重要課題。新井先生はそう訴えています。
今までの教育は読めることが前提で、読めていないことに気づいていたのは、現場の先生方だけだったから。

「小学校でドリルをやって、テストで85点取れた子が、”でも読めない”。
デジタル教材に走って、“やった気”になるけれど読めないまま。

英語とプログラミングをやってる場合じゃない。勘弁してください!

シンガポールに1日視察に行って『デジタル教科書いいね』って取り入れるの、まちがってます。こうやったらできるんじゃない?って電子黒板配るのやめて下さい!」


文科省や自治体、教育関係者が集まる中での訴えでした。


新井先生は人工知能の専門家ですが、「読めないAI 」が「読める人間」を越えることはない=シンギュラリティはこない、と断言されています。
でも、人間が読めなかったら圧倒的に不利ともおっしゃっています。

ここで、東ロボくんの得手不得手を見てみましょう。

f:id:whiteboard16:20171104193036j:plain

   毎日新聞より

ここからは私の所感です。
公立中高一貫校の適性検査は、「AIが苦手とする事」に良く似ています。
そして、東葛飾中学校が力を入れているのも、まさにここだと感じます。

「エリート教育してるんでしょ?」と、ふわっと誤解されがちな東葛中ですが、「AIの不得意な事をもがきながらやっている、しかも従来の学習もやるべきとされる学校」というのが近い気がします。

従来の学習の方が「やった感」があるし、AIの苦手なことは、正直人間も時間や手間がかかって面倒くさいので、もがきながら、と書きました。

個人的には、知的好奇心や読書量がリーディング能力に影響しているように思えますが、アンケートの分析では関連性が見つかっていません。
ただし、アンケートの正当性については、回答者が自分をモニタリングできず、無意識に盛ってしまっていれば、関連が出るはずないとの仮説を新井先生から伺いました。

じゃあ、どうすればいい?という問いに、現段階で解決策は出ていませんが、新井先生へのインタビュー記事が心に響きます。

「本を1日に3冊読むのではなく、1冊をじっくりと時間をかけて、何度も読むこと。上滑りの知識ではなく、腹の底から分かるというところまで理解すること。相手の意見を自分の考えとすり合わせていくこと。柔軟性やリアリティを持って知識を身に付けられる土台を作ること。本当の知識を身に付けるにはそのような「我慢」が必要」
~国大協広報誌「国立大学Vol.46」より~


新井先生は、この研究の成果を2020年の教育改革に生かしたい、「絶対にどうにかするんです」と、強く訴えていらっしゃいました。

ツイッターに地味な弁当写真を上げる”お母ちゃん”感覚と、TEDでプレゼンする華やかさを持ち合わせる新井先生。様々なジャンルの研究者や現場の先生方が、がっちりと先生を支えていらっしゃる様子が感じられるフォーラムでした。




【参考サイト】

 

 



✳✳✳

 


リーディングスキルと、ディスレクシアや親が外国人の場合のケアは別とフォーラムで補足がありました。

ディスレクシアは、トム・クルーズの例があり比較的有名ですが、光の感受性障害であるアーレンシンドロームは、筑波大学の専門家になかなか辿り着けないことから、知名度に欠けるところがあります。
私は、アーレンシンドロームの読みにくさと、新井先生のおっしゃる読めなさの違いに興味があり、このフォーラムに参加しました。

アーレンシンドローム学習障害ではないので、気付かずに我慢している方がいらっしゃるかもしれません。暗いところで本を読みたがるといった特徴があり、特殊なサングラスの使用によって辛さを軽減できます。





広告を非表示にする